ロマゾフィー協会 Romasophie

イカダイコン

忍法おもしろ対談

このコーナーでは毎回、ゲストをお迎えして、平岩浩二のおもしろ対談をお送りします。


「銀座の若大将」

お相手:テヂュングムさん

(ネタばれあり。映画の内容に関する記述があります。)

テヂュングム: 平岩浩二先生特選シリーズ 第2弾は1962年の作品「銀座の若大将」です。この映画は加山雄三主演の若大将シリーズの第2作ですね。60年代ものということで、何か思い出がおありなのでしょうか?

先生: それが、実は以前は全く観た事がなかったのです。きっかけは、妻が子どもの頃よく両親と若大将シリーズを観ていたというので、初めはレンタルヴィデオで観て、面白いのでDVDを買うようになりました。

テヂュングム: 昭和37年の作品ですので、観て無い方も多いと思います。若い方にも分かるように、少し説明していただけますか?

先生: 若大将シリーズはパターンが決まっているのが嬉しいです。加山雄三演じる「若大将」に対して、田中邦衛演じるライバルの「青大将」がいて、仲は良いのですが毎回もめて、ヒロインの取り合いをするのです。必ず青大将がヒロインに強引に襲いかかるシーンがあって、それを若大将が助けるのですが、ヒロインに偉そうに忠告する事によってせっかく助けたのにかえって気まずくなって、ラストでやっと誤解が解けて結ばれるというストーリーです。
 また若大将が「田能久」という老舗の牛鍋屋の息子で、有島一郎演じるお父さんの「田沼久太郎」、飯田蝶子演じるおばあちゃんの「田沼りき」。久太郎は若大将「田沼雄一」に厳しいけれど、おばあちゃんはいつも甘やかして意見が対立し、おばあちゃんが久太郎に向かって二言目には「なんだいお前は商業高校しか出ていないくせに」と言ってやりこめる、お決まりのパターンが毎回毎回飽く事無く出てきます。
 それが許容されていたということは、昔は良い時代だったと思います。今の人はマンネリの良さが分からないから、このようなシリーズが育たないのでダメです。
 有島一郎については講演会ですでにお話ししましたのでここでは詳しく言いませんが、飯田蝶子という人は、小津安二郎の戦前の作品で頻繁にヒロインを演じていた喜劇の巨匠です。若大将シリーズでも高齢を感じさせない非常に軽快な動きや、コミカルな演技を随所で見せてくれます。
 加山雄三については若大将シリーズは最近まで観ていませんでしたが、歌は昔から好きでして、高校生の頃は私の中の好きなアーティストベスト10に入っていて、カセットテープを何度も何度も聞いていました。また、若大将が弾厚作というペンネームで作曲したレパートリーがことごとくマンネリで、同じパターンのものばかりで、それが非常に嬉しいのです。

テヂュングム: 面白い所をうまくかいつまんでお話し下さいましてありがとうございます。何本も観て、パターンを楽しむというのが醍醐味になってきますね。

先生: はい。パターンの最たるものは、設定は変わっているにも関わらず、ヒロインが毎回星由里子で、初対面で出会って恋をするのですが、名前がいつも「澄子」(笑)。こういうところが非常に嬉しいです。

テヂュングム: そうですよね。大学生だったり社会人だったり、同じ大学生でもやるスポーツが違っていたり、設定は変わっても同じような台詞回しと同じような話の流れ。何本も観ていると、「今回はこう来たか」(笑)、と楽しめますよね。

先生: シチュエーションだけを変えてゆくというのが実に楽しいです。スポーツを変える他に、舞台を変えています。銀座の他にハワイ、アルプス、ニュージーランド、海、といった環境だけを変えるのも楽しいですね。

テヂュングム: 加山雄三演じる田沼雄一が毎回かっこよくスポーツをし、また必ずバンドをやっていて、女の子たちをとりこにしてゆく。それもまた魅力ですよね。

先生: しかもラストシーンは、毎回その時やっているスポーツの決勝戦で、いつも逆転勝ちするという(笑)。

テヂュングム: 毎回、澄ちゃんが遅れて駆けつけて、「雄一さん!」と叫ぶと大逆転をするのですよね(笑)。

先生: お決まりのパターンで、全く期待を崩さない所が嬉しいです。

テヂュングム: 分かっているのだけど、そのシーンでドキドキします。

先生: そういうものですね。映画というのは。

テヂュングム: 子どもと一緒に観ても楽しいですよね。

先生: 全く害が無くていいですね。

テヂュングム: 若大将シリーズは、当時はどのくらい流行ったのですか?

先生: 異例の大ヒットを飛ばしたようです。

テヂュングム: この時代に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

先生: はいそれはもう大きな影響力で、クレージーキャッツ映画と車の両輪で、ポジティブシンキングを日本中に与えていきました。

テヂュングム: 田沼雄一はすぐにけんかしては開き直り、大食いで、いつもみんなと大騒ぎをして、はちゃめちゃですよね。

先生: 今どきの若者の、変に健康に気を使ったりするのは良く無いですね。若いうちは、田沼雄一のように1日5食というくらいが良いと思いますよ。

テヂュングム: 大食いぶりといい、はちゃめちゃぶりといい、清々しいです。必ず運動部の合宿シーンがあり、仲間とふざけ合うシーンは観ていてわくわくするし、懐かしいです。これこそ学生時代だと思います。

先生: そうですね。その時マネージャー役の江原さんが必ずやらかしてしまうのもいいですよね。

テヂュングム: 私もそのシーンが大好きで、毎回今度は何をやらかすのだろう、と楽しみです。先生のマニアックなお勧めシーンはありますか?

先生: 先ほど言いましたが、久太郎とおばあちゃんがやり合う、そしてもっぱら久太郎がやり込められてしまう場面です。

テヂュングム: おばあちゃんいいですよねー。とても小柄な可愛い感じのおばあちゃんなのですが、軽やかにテンポ良く話します。それが聞いていて小気味良く、いつもどもりぎみの久太郎との対比が面白く、なぜか安心感を抱きます。

先生: そうですね。こういうのが無ければ映画ではないですね。若大将のDVDボックスを買うと、若大将が歌っているシーンばかりを集めたおまけのDVDが付いてきますが、有島一郎と飯田蝶子の対決シーンだけを集めたDVDもあっていいと思いますね。

テヂュングム: 有島一郎の大ファンとしては本当に楽しめます。また当時売れっ子だった女優さん達もたくさん出ていますが、やはり飯田蝶子のベテランぶりには足元にも及ばない感じです。

先生: 毎回妹役で出ている中真千子さんの存在感が全く無いですからね。しかしシリーズの途中で、妹とマネージャーが結婚するのが嬉しいです。

テヂュングム: マネージャー役の江原さんのとぼけぶりがいいですよね。運動部のマネージャーなのに、その運動が全く出来ないという(笑)。本当に面白い人で、根っからマネージャーしか出来ない彼ですが、独特の魅力があり、その彼が田沼雄一の義弟として家族になって、それからどうなったのだろうととても興味が湧いてきます。是非その先も見たかったですね。

先生: 脇役陣として、左卜全が教授で出ていたり、加山雄三の実の父親の上原謙が出ていたりします。上原謙の目の前で有島一郎が加山雄三の事を「俺に似て二枚目だ」という所が本当に面白いです。

テヂュングム: 若大将シリーズはそういう細かい点を観ていっても面白い所がたくさんあって、ここでは語り尽くせないですね。レンタル屋さんにもあるかとは思いますが、余裕のある方は是非買って何度も観て楽しんでいただきたいですね。

先生: 皆さんにお勧めです。