ロマゾフィー協会 Romasophie

イカダイコン

忍法おもしろ対談

このコーナーでは毎回、ゲストをお迎えして、平岩浩二のおもしろ対談をお送りします。


「クレージーだよ天下無敵」

お相手:テヂュングムさん

(ネタばれあり。映画の内容に関する記述があります。)

テヂュングム: 平岩浩二先生特選シリーズ 第3弾は1967年の作品「クレージーだよ天下無敵」です。

先生: 今回もまた渋い所を責めています(笑)。クレージーキャッツの映画には、無責任シリーズ、日本一シリーズ、作戦シリーズと言う3本の柱があるのですが、この「クレージーだよ天下無敵」はそのいずれにも属さない変な映画である所が、魅力と言えば魅力です。この映画は一応クレージーメンバー全員が出ているのですが、あくまでも植木等と谷啓のライバル同士の対決という構図で、他の5人はあくまでも脇役に徹しています。このような構図の映画は後にも先にもこの1本だけです。

テヂュングム: 植木等と谷啓のダブル主演が新鮮です。

先生: そうですね。その前に谷啓の初主演「クレージーだよ奇想天外」という映画がありまして、それが評判良かったためにダブル主演になったわけです。

テヂュングム: だいたい植木等がメインのクレージー映画ですが、谷啓と植木等が2人で主役を演じても、全く違和感を抱きませんでした。対照的な2人だから、成り立つ映画ですよね。これが植木等とハナ肇だったらどうだろうと考えたとき、やはり違いますね。

先生: この前講演会でお話ししたように、ハナ肇は織田信長型、植木等は豊臣秀吉型、谷啓は徳川家康型です。信長と秀吉は同じ穴のムジナですから、対立の構図にはならない。対立するとしたら、あくまでも秀吉と家康ですね。既に、「ホラ吹き太閤記」でそれぞれ秀吉と家康を演じた2人なのですが、今回もその延長線上で、ちゃんと植木等が勤めている会社は「トヨトミ電気」、谷啓が勤めているのが「徳川無線」。そのままきっちり色づけがされています。
 非常に恐ろしいと思ったのは、冒頭に2人の先祖が対決している場面が出てくるのですが、植木等が神武天皇、谷啓がナガスネヒコで、もちろん神武天皇がだまし討ちで勝つ。とその次に植木等が宮本武蔵、谷啓が佐々木小次郎、またもちろん武蔵がだまし討ちで勝つのです。これは観ていてぞっとしましたね。まぎれも無く宮本武蔵は神武天皇の子孫だし、佐々木小次郎はナガスネヒコの子孫なのです。

テヂュングム: そうなのですか! この脚本を書いた方は凄いですね。一番最初にそのようなシーンをわざわざ持って来たのですね、確かにぞっとします。それだけでなく、秀吉対家康という構図までみごとに植木等と谷啓の人物像に当てはまりますね。

先生: この映画の奥深い所は、対立していた2人がともに巨悪と戦うために手を結んで、最後に大成功する、という所です。それは結局、この宇宙に於いて、この先最終的に神武系とナガスネヒコ系が和解をしてともに手を携えて仲良く繁栄していかなければいかん、ということを言っているわけです。

テヂュングム: 今まで対立していた2つの流れ、それは和解するべきだ、というのは分かるのですが、それは近い将来の事でしょうか? それとも遠い未来の話なのですか?

先生: 近い将来です。

テヂュングム: 今までは相交えなかった人達でも、自分の力も相手の力も認めた上で、互いに力を合わせてやっていかなければならないのですね。

先生: そのうち、神武系だ、ナガスネヒコ系だ、と言っていられなくなりますからね。

テヂュングム: それだけ大変な事が起きるのですか?

先生: そうです。そのためにこの映画はあるわけです。

テヂュングム: 昭和42年に伏線があったのですね。

先生: その頃は地球の波動が最も高まった時期ですから。2013年以降を先取りした時代でした。

テヂュングム: トヨトミ電気と徳川無線は、最初は敵対する同業社だったのに、映画の最後の方で、合併して一つの大会社になりました。合併ばかりしている最近の風潮を連想させますね。

先生: そうなのです。これは本当に恐ろしい未来予知で、合併した巨大企業が、全くのインディペンデントの小企業によって倒されてしまうと言う、恐ろしい話なのです。

テヂュングム: そのインディペンデントの小企業というのは、映画の中では植木等と谷啓が起した会社の事ですが、そもそもは、2人のでまかせなのですよね。こんな商品あるわけないのに、と言っていたのを、2人の力で実現してしまうのです。

先生: そこがすごいところですよね。

テヂュングム: 前から先生は、大企業は合併していっていつか崩壊するとおっしゃっていますが、こういう事なのかと思いました。小さい企業の大きな努力や底力が、大企業の中でぬくぬくと育った人達には無いような斬新な発想を生み出すのですね。

先生: その通りです。そのためにも、神武系とナガスネヒコ系が和解しないといけないのです。

テヂュングム: どんな環境にいても言える事ですよね。これから意識して、いろいろな人と理解し合えるように努力したいと思います。また、この映画は未来予知的なものが含まれる凄い映画ではありますが、基本的には、はちゃめちゃ映画であるという所が魅力ですよね。

先生: そうでなければ真実は伝えられないです。

テヂュングム: 主役の2人以外のクレージーメンバーが、所々テンポよく出て来て笑わせてくれます。それとやはりクライマックスのテレビ局乱入シーンが見物ですね。

先生: はい。この場面ではクレージー以外では田崎潤も非常にいい芝居を見せてくれていますし、私も大好きな桐野洋雄や、名前を知らないいつも殺し屋で出てくるおじさんも非常にいい味をだしています。それに脇役に徹しているはずの桜井センリが生涯でベストとも思える名演技をしていますので、ぜひ観ていただきたいです。安田伸と石橋エータローのコンビも全く必然性のない出方をしているのですが、これもぴりっと効いています。

テヂュングム: なぜ桐野洋雄は殺し屋があんなに似合うのでしょうか(笑)。それに絡んでくるニュースキャスターの桜井センリもおかしくて、お腹を抱えてひっくり返って笑ってしまいました。繰り返し何度も観たいシーンです。安田伸と石橋エータローの美容院シーンもいいですね。

先生: ハナ肇のハゲの町医者も面白いです。それと、犬塚弘の善良この上ない運転手も非常にいい味を出しています。

テヂュングム: 私は、犬塚弘が女性の裸の看板を本物だと思い込んで、それに向かってイヤらしい顔で突進してゆくシーンが大好きです(笑)。

先生: 実は植木等の罠だった(笑)。

テヂュングム: この映画の植木等は、女性のお色気に弱かったりお調子者で悪知恵がよく働いたりする役どころですが、それらが最終的には悪を倒すために必要だった、という所が面白いですね。

先生: はい。それに植木等の相手役の野川由美子、谷啓の相手役の高橋紀子が、明確に内助の功を見せて、悪の巣窟に突進して格闘するという辺りも、非常に好感が持てますね。

テヂュングム: ラストシーンも印象的ですね。野川由美子と高橋紀子の台詞が心に残ります。
高橋「うちの社長(植木等)と副社長(谷啓)はどうしてああ張り合ってばっかりいるのかしら。」
野川「2人で切磋琢磨しているから事業の方も上手く行くのよ。」
高橋「せめて私たちだけでも仲良くしなくっちゃ。」

先生: これはプロレスの世界にも良くある事です。対立している選手の奥さん同士は仲が良いというのは(笑)。

テヂュングム: 見習いたいです(笑)。ありがとうございました。